わかりづらいMRIの原理を解説していくシリーズ、第2弾。
今回は、MRIを勉強していてまず嫌になる言葉であろう、共鳴、励起の流れを見ていこうと思います。
前回は静磁場(MRI)の中に入ると、なぜ人体のプロトンが磁石として振る舞うかについて簡単に解説しました。
まとめると、バラバラの方向を向いていたスピンの向きがそろうからですよね。
今回はMRIのresonanceの部分(共鳴)からのながれについて話していきます。
まず、教科書的な説明として
という、パッと聞いただけ(読んだだけ)ではよくわからない文言は目にしたことがあると思います。
急にRFパルスとか、共鳴とか言われても意味わからないですよね。
ゆっくりと少しずつ学んでいきましょう。
MRIにおける共鳴とはなんですか?
まずMRIの日本語訳の一部分にもなっている共鳴という言葉から始めていきましょう。
共鳴ってなんかかっこいい響きのする言葉ですが、どういう意味なのか説明できますか?
共鳴とは、すごく簡単に言うと、「あるエネルギーを与えたときに、特定の物だけが反応する(エネルギーが移動する)こと」を指します。
1.5テスラのMRIの場合では、63.9MHzのエネルギーを与えると、「プロトンのみ」がそのエネルギーを受け取ります。
人体内にある、他の原子核たちは反応しない。
これが共鳴です。
そして、共鳴したプロトンは励起します。
励起するとは、
「エネルギーを受け取って、不安定な状態になること」
をいいます。
ここから縦緩和と横緩和の話が出てきます。
xy平面の話(横緩和の伏線)
まず、励起される前はスピンはxy平面上で考えると向きはバラバラです。(位相はバラバラ)
下のgifのように赤、青、緑、オレンジのベクトルが重なり合わずにグルグル回っています。
それが一整に一か所に集まってきます。
これを”位相が揃う”と言います!
このように赤、青、緑、オレンジのベクトルが重なってグルグル回りだします。
なんとなく力が重なって大きなベクトルになった気がしますよね。
↑位相が揃ったスピンが回転している様子
前回言ったのは、静磁場内ではスピンは上向きと下向きにだけなるという話。位相は関係ありませんでした。
ここらへんがややこしいですよね。
とにかく、励起されるとxy平面上で位相が揃います。
z軸の話(縦緩和の伏線)
次にz軸上の話です。
励起される前は、前回も言ったようにプロトンの数は上向き>下向きですよね。
励起されると、上向きスピンのいくつかは下向きになります。(下向きスピンの方がエネルギーが高いので)
そしてついに上向きスピンと下向きスピンの数が同じになります。
これを全体的にみると、上向きの磁化ベクトルが倒れていくように見えますよね。上向きスピンと下向きスピンの数が一緒になると全体的な磁化ベクトルは上向きから90°倒れるのと同じになります。
※スピン自身が横に倒れるわけではありません。スピンは上向きか下向きしかならなくて、全体的な向きが90°倒れていくように
見えるという話です。わたしも勘違いしていました。
そして磁化ベクトルを90°倒す(上向きスピンと下向きスピンの数が同じになる)強さのRFパルスを90°パルスと呼びます。
すこしでもわかりやすくするように、ものすご~く簡単なイメージを用意しました。
最初は上段のようにスピンが10個あるうちの8個が上向き、2個が下向きにスピンになっていたとします。
ここで90°パルスを加えると、まず中段のように2個の上向きスピンが下向きになり、6:4になります。
さらに進むと、下段のように上向きと下向きのスピンの数が同じになります。
上向きと下向きのスピンの数が同じになれば、相殺されて、全体的な縦のベクトルはゼロになりますよね。
(教科書ではカッコつけて、“巨視的磁化がゼロとみなせる”とか言ってます。)
これはつまりどういうことかというと
だいたいこんな感じのことを言っています。
▼少しでもわかりやすくするためにgifをつくりました▼
縦磁化が小さくなっていくにつれて、その歳差運動のz軸の高さは小さくなっていきます。そして縦磁化がなくなる(上向きと下向きのスピンの数が同じになる)と、スピンはxy平面上を回転することになります。
※RFパルスとは何か
RFはradio freqencyの略で、用いられる周波数がFMラジオの周波数領域と同じなので、そう呼ばれているようです。
パルスは、”短時間に発する信号”みたいな意味です。
なので、だいたい数十MHzくらいの周波数の信号みたいな意味です。
励起されたあとに何が起こるのか…??
さて、励起されたスピンは位相が揃っているので、一つの大きな磁化ベクトルとなります。
そして90°パルスを加えていればxy平面上で一本の棒磁石が回っていると考えられます。(90°パルスを加えた場合は上向きスピンと下向きスピンが同数なのでz軸方向のベクトルがなくなり、xy平面方向のベクトルしか残らないため。)
そしてこのxy平面上の一本の棒磁石ができたときにコイルに電流が流れます。
この電流こそが、あの”FID信号”なのです。
FID信号は生じるのですが、励起されて揃ったはずの位相はすぐにまたバラバラになっていく(緩和していく)ので、FID信号そのものはすぐに消失してしまいます。
では、今回はココまでにしましょう!
▼今回のまとめ▼
次回は、あの憎き”縦緩和と横緩和”について解説していきます!
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