【MRIの原理をやさしく解説vol.5】なぜGRE法は撮像時間が短くなる?その原理について

 

SE法と双璧をなす撮像法、GRE法とは

 

前回はSE法の画像の作り方と特徴について解説しました。

【MRIの原理をやさしく解説vol.3】SE(スピンエコー)法をわかりやすく解説 なんで90°と180°パルスの2回使うの?

2019.12.27

 

今回はSE法のほかによく聞く代表的な撮像法であるGRE法について解説していきます。

 

ではまず、GRE法とSE法のパルスシーケンスを見てみましょう。

 

▼パルスシーケンス(上がSE法、下がGRE法)▼

このようにSE法と比べてGRE法ではだいぶすっきりしたような印象ですね。

 

すっきりしているということは、それだけ時間もかからないということです。

 

SE法では、90°パルスをかけてから、さらに180°パルスを加えてエコー信号を受信していました。

 

それに対してGRE法ではRFパルスを加えたあと、他にパルスは加えずにエコー信号が受信できています。

加える信号が少ない分、時間は短くなります。

 

 

SE法ではなぜ180°パルスを加えていたか?

 

ではここで、なぜSE法の場合は90°パルスを加えたあとに180°パルスを加えていたのかを思い出しましょう。

 

90°パルスを加えることで、横磁化をつくりますが、その直後からT2緩和は始まります。

FID信号が急速に減衰していくってやりましたよね。。。

 

MRIの原理を基礎から解説vol.2~緩和してるときのスピンの気持ち~

2019.12.13

 

そこで180°パルスを加えることでバラバラになっていく位相をそろえてエコー信号を受信していました。

GRE法では90°パルスではなくα°パルス(90°より小さいRFパルス)を使います。

 

GRE法でも、RFパルスをかけた直後からFID信号の減衰が始まるのは同じです。

 

ではどうやって減衰していく信号からエコー信号を受信するのでしょうか。。。

 

 

減衰するFID信号を再収束させる考え方はほとんど同じ!

 

 

基本はSE法のときと同じです。

SE法のときは180°パルスを加えることで反転させていましたね。

 

GRE法でもあるものを反転させます。

 

それが“傾斜磁場”なのです。(グラジェントは傾斜の意味です)

GRE法では”傾斜磁場”を反転させることでエコー信号を発生させています。

 

では「傾斜磁場を反転させる」とはどういうことでしょうか。

 

位相はRFパルスを加えた直後からバラバラになっていきます。
FID信号もそれと同じように減衰していきます。

 

そのままでは、ただ急速に減衰していくだけなので、ここに傾斜磁場をかけます。

 

傾斜磁場は磁場強度を(傾斜をつけて)変化させます。

 

磁場強度を変化させると歳差運動の周波数が変化し(回転スピードが変わり)、それはスピンの位相の変化になります。

▼詳しくはコチラをご覧ください▼

【MRIの原理をやさしく解説・番外編】傾斜磁場を与えると位相が変化する理由を動画で解説

2020.01.01

 

スピンの位相の変化が起きるということは、「バラバラになるスピードがさらに加速される」ということです。

 

GRE法では、ここでわざとバラバラになるスピードを加速させて、そこから傾斜磁場を反転させることで位相を一致させてエコー信号を発生させます。

 

SE法で180°パルスを加えると位相が揃ったように、GRE法では反対の傾斜磁場をかけると、早く進んだ位相はその分早くもどり、遅く進んだ位相は同じようにゆっくりもどっていくので、ちょうどスピンの位相が一致するタイミングができます。

 

そのタイミングに合わせて信号を読みだしています。

 

▼傾斜磁場をかけてFID信号が変化する様子▼

 

GRE法は短時間撮像だからいいとこだらけなのか

 

さて、GRE法ではSE法よりも短時間ですむと言いました。

 

じゃあ全部GRE法で撮像すればいいんじゃないの?

と思いますよね。

 

ここからGRE法のよくないところを発表します

 

GRE法では90°パルスを使わずα°パルスを使います。(α°というのは、決まっていない、任意の、くらいの意味です)

なぜ90°パルスを使わずに、それより小さいRFパルスを使うんですか?

 

GRE法では180°パルスを使わないので、その分TRは短くなりますよね。
TRが短いということは、縦磁化が十分に回復する時間がないということです。

 

ではどうしよう…

そうした時に考えられたのが

 

90°パルスで倒しすぎていたから回復する時間も多くかかるんだし、90°も倒さなくていいんじゃない?

というアイディアです。

 

90°も倒さず、適当な角度(α°)倒すことで、TRが短くなっても縦磁化が回復できるようにしました。(全部倒していないので、縦磁化が完全に回復する時間がSE法よりも短い!)

 

しかし…

 

90°倒さないということは、そのぶん横磁化成分はSE法よりも小さくなります。
横磁化成分が受信コイルに信号を発生させているので、それだけ発生するエコー信号は小さくなります。

MRIの原理を基礎から解説vol.1~共鳴と励起の流れを見てみよう!~

2019.12.11

なので、基本的にGRE法のSN比はSE法よりも小さくなります。

 

GRE法は180°パルスを使わない=磁場の乱れの影響が大きくなる

 

また、SE法では180°パルスを使っていましたが、それは磁場の不均一を調整する役割もありました。

 

GRE法では180°パルスを使わないので磁場の不均一はそのままになります。

 

これまで解説してきた横磁化の緩和(T2緩和)に加えて、磁場の不均一性などいろいろな影響を受けることによってさらに緩和のスピードが速くなります。

 

この、「T2緩和に加えて、その他もろもろの影響を受けてさらに早く緩和するスピード」のことを「T2*(ティーツースター)」といいます。

T2*はT2より早く減衰するので、必ずT2*はT2より短くなります。

 

なので、GRE法ではT2強調ではなくT2*強調画像になります。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

カロン

大学卒業後、大学病院、透析クリニックを経て、民間の総合病院に勤務しています。 自身の経験から悩める新人放射線技師や放射線技師を目指す学生に発信していきたいと思っています。 ◇保持資格◇ ・診療放射線技師免許 ・第一種放射線取扱主任者試験合格 ・AHA BLSヘルスケアプロバイダーコース受講済み