前回はSE(スピンエコー)法の原理について解説していきました。
その時に解説した用語であるTRとTE。
これらのパラメータを調整することでSE法で得られる画像はコントラストが変わってきます。
そうです。
T1強調画像とかT2強調画像ってありますよね。
なぜTEやTRを変えるとコントラストの違う画像ができるのか
学校ではとにかく、
という風に教わりますよね。
これだけなら忘れることはありませんし、覚えやすいので国家試験の勉強ならそれ以上深くやる必要はないかもしれません。
ただ、どうしてその長さにするとT1強調画像やT2強調画像ができあがるのかをしっかり理解しておくことで面白さもわかってきますので、余裕がある場合はもう少し勉強してみるのもいいですね。
ではまず、T2強調画像、T1強調画像という言葉から見ていきましょう。
組織には固有のT1値やT2値があります。(組織ごとにちがう値をもっている)
MRIではその組織のT1値の差、T2値の差をコントラストとして画像にしています。
なので、T1の差を強調した画像→T1強調画像と呼んでいます。
どうやってT1の差を強調しているんだい
では、どうやってその差を強調しているのか見ていきましょう。
まずはT1強調画像からです。
T1強調画像ではTE,TRを短くするとT1のコントラストが大きくなると言われますよね。
TE=90°パルスを加えてからエコー信号が出るまでの間隔
なぜTRとTEを短くするとT1が強調されるのでしょうか?
TR、TEともに短くしないといけないように感じますが、T1に大きく関係してくるのはTRの値です。
T1強調画像は基本的に縦緩和のお話です。
では、TRを長くする(=90°パルスと90°パルスの間隔を長くする)とはどういうことでしょうか。
90°パルスを加えると縦磁化は90°倒れますよね。
そして時間がたつにつれて縦磁化は戻ってきます(回復してきます)。
この回復してくる早さのことをT1値と呼んでいます。
“TRを長くする”というのは、ゆっくり回復する組織(T1が長い組織)でも縦磁化が回復するのを待っているのと同じことです。
TRを長くすると、T1の短い組織(早く回復する組織)もT1の長い組織(回復に時間のかかる組織)も回復しますよね。
ということは、どの組織も縦磁化が回復してしまう。つまり、どの組織が回復が早い(T1が短い)かがわからないということです。
それではT1コントラストがつきません。
では次に、そこそこTRを短くしてみるとどうでしょうか。
この“そこそこ短い”というのがポイントです。
そこそこ短いTRにすると、T1の短い組織は回復済み、T1の長い組織はまだ回復していない状態になります。ここでコントラストが
生まれます。
T1の短い組織は回復しているので、そこからまた90°パルスを加えているため、しっかりエコー信号が出ます。
対してT1の長い組織は縦磁化が回復しない状態で90°パルスを加えることになるのでエコー信号は弱くなります。
というわけでTRが(そこそこ、いい塩梅に)短いとT1の協調された画像になります。
▼縦磁化が回復する前に90°パルスを加えてコントラストをつける様子▼
TEも短くしなければいけないワケ
と思ったあなた。
そうです、TEも短くします。
これはどういうことかと言うと、次で述べますが、TEはT2のコントラストに影響を与えます。
TEが長いとT2のコントラストが強調されます。でも、T1強調画像を作りたいときにTEを長くしてしまうとT2っぽさが出てきてしまいます。
T1の良さを引き出してきてあげたいのに、T2も出しゃばってきたら邪魔ですよね。
というわけで、TEを短くしてT2の要素をできるだけ排除してあげます。
T2強調画像が欲しいときはTR,TEともに長くします。
次にT2強調画像について考えてみましょう。
T2強調画像の場合は、横緩和がキーになります。
縦緩和の場合は回復する磁化の話でしたが、横緩和では減衰していく磁化の話になります。
緩和の回で説明したように、横に倒れた巨視的磁化は急速に位相がバラバラになっていきます。
この急速にバラバラになっていく早さも、組織によって異なります。
そしてバラバラになっていくスピードをT2としています。
例として、脳のT2緩和時間を載せておきますね。
・水 2500ms
・脂肪 100ms
・灰白質 300ms
・白質 100ms
ご存知の通り、水のT2は長くて脂肪のT2は短いです。
つまり、脂肪はすぐに位相がバラバラになり、水組織は時間がたってもそこまでバラバラになりません。
TEは90°パルスを加えてからエコー信号までの時間でしたよね。
TEが短いと水も脂肪も位相がバラバラにならない状態(差があまりない状態)でエコー信号を収集することになります。
これではコントラストはつきませんよね。
つぎに(そこそこ、いい塩梅に)T2を長くすると脂肪はバラバラに、水はそこまでバラバラでない状態のときにエコー信号を受信することになります。
これなら差がついて、コントラストのある画像になりそうですね。
▼減衰していく横磁化の様子▼
T2強調画像の場合はTRも長くします。
さきほど言ったように、TRが短いとT1のコントラストがでやすくなります。
T2成分が欲しいのにT1成分がでてきても困りますよね。
というわけでT2強調画像が欲しいときはTRを長くしてT1コントラストを小さくします。
プロトン密度強調画像は…
TRとTEの長さの組み合わせでT1,T2強調画像ができることを説明してきました。
では、ほかの組み合わせではどんな画像ができるか気になりますよね。
プロトン密度強調画像(PDI)では、T1,T2どちらの信号も小さくした画像になります。
すると、その画像は何を反映しているかというと、純粋にプロトンの数の違いが信号として現れます。
なのでプロトン”密度”強調画像となります。
プロトン密度強調画像ではTRを長く、TEを短く設定しています。
なぜかというとTRはT1成分、TEはT2成分をつかさどっていましたよね。
TRを長くするとT1コントラストは少なくなり、TEを短くするとT2コントラストは少なくなります。
これでT1もT2も影響の少ない画像(プロトンの数のみが反映される画像)ができます。
「プロトン密度強調画像ってTRとTEをどうするんだっけ…」といつも悩む方は原理を理解しておくと覚えやすいですよ!
反対にTRを短く、TEを長くするとT1,T2ともにコントラストが大きくなります。
一見良さそうに感じますが、T1,T2どちらの信号も出ていると逆にコントラストのない画像になってしまって使えない画像になってしまいます。
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