前回までは、RFパルスを受け取ったプロトンの挙動である
共鳴→励起→緩和の流れについて解説していきました。
今回は、そのあとの話、どうやってMRIの信号を出しているかについて解説していきます。
まずは、MRIの撮像法の中でもベーシックなSE(スピンエコー)法からはじめていきます。
MRIの撮像方法にはほかにもGRE(グラジェントエコー)法とかいろいろありますよね。でもまずはSE法についてしっかり理解することで他の撮像法についても理解しやすくなると思います。
SE法の特徴としては、
・少し時間がかかる
・その分、画質はキレイ?
・磁場の不均一の影響を受けない…→意味不明!!
などがあります。
最初はよくわからないと思いますが、そもそもSE法とはなんなのかから説明していく過程で解説していきますので安心して下さい。
SE法も基本は一緒。まずは90°パルスを加えます。
SE法はどのようにして始まるのかというと、ここまでで解説してきたように90°パルスを使っていきます。
90°パルスを加えると、これまで解説してきたように巨視的磁化は90°倒れますよね。
そして横磁化はすぐに緩和していってしまうため、FID信号はみるみるうちに減衰していってしまいます。
▼減衰する横磁化とFID信号の様子▼
これではMRIの画像をつくることができません。
では、ここからどうやって信号を作っていくのかというと、
90°パルスよりも強い180°パルスというものを加えます。
そう思いますよね。
では、横磁化が減衰しているときに180°パルスを加えるとどうなるか、下のイメージを見てください。
▼バラバラになっていく横磁化が180°パルスを加えられて再度揃っていく様子▼
なんと、バラバラになっているはずの横磁化が再びもとに戻っていますよね。
カッコよく言うと、位相がまた揃い始めました。
そうなんです。
このように、180°パルスを加えることでバラバラになっていく位相が再び揃うようになって信号が出せるようになるんです。
こういったシーケンスを見せられても、何で180°パルスを加えるのか、何でこれで信号が出てくるのかよくわかりませんが、こうやって見てみるだけですぐにわかりますよね。。。
なんでSE法のTEは2α時間なのか??
どころで、よく参考書では、90°パルスをかけてから180°パルスをかけるまでの時間をαとすると、TEは2αとなる。
という風に書いてありますよね。
わたしもこんな感じの文章を読んで、何度も挫折しそうになりました。
みたいな感じですよね。
TEとは、「RFパルスを加えてからエコー信号が発生するまでの時間(SE法では90°パルスを加えてからエコー信号が発生するまでの時間)」のことを言います。
そして、SE法の場合は(90°パルスを加えて磁化を倒してから、180°パルスを加えるまでの時間)×2 がTEとなるということです。
90°パルスを加えた瞬間から横緩和は始まっていきます。
なので「位相がバラバラになり始めた時から180°パルスを加えるまでの時間」と「180°パルスを加えてから位相が揃うまでの時間」は同じということを言っています。
なんだか不思議な感じがしますが、このように、バラバラになっていくスピードが同じでも「180°ひっくり返す」ことで状況は逆転して同じ時間後には位相は揃うようになります。
そして、バラバラになった位相がもう一度揃った時に信号が発せられます。
これを何回も繰り返してMRIの画像はつくられています。
SE法では、位相マトリックスの数だけ90°パルスを加えて信号を出します。
それでも信号が不十分な場合はさらに繰り返して、信号を強くします。
この「繰り返す回数」のことを加算回数といいます。
TRとはなんだい??
180°パルスを加えて一回だけエコー信号を出したら撮像は終わりじゃないですよね。
この一回だけのエコー信号では画像はできないので、エコー信号を出してから、また同じように90°パルスを加えて同じように、180°パルス、エコー信号…と続きます。
この90°パルスを繰り返す間隔のことをTR(繰り返し時間)といいます。そのまんまですね。
というわけで、SE法の撮像時間は
TR×位相マトリックス数×加算回数
となります。
テストにもよく出るやつですよね。
SE法が磁場の不均一に強いと言われる理由
また、180°パルスを加えると磁場の不均一や磁化率の影響を少なくさせることができます。
なんのこっちゃと言いたくなりますよね。
理想的にはMRI室のような静磁場の中は磁場は均一のはずです。
均一のはずなんですが…
人が入ったり、いろんな影響でゆがみが生じてしまうのです。(=磁場の不均一)
磁場が不均一になると、画像にも影響が及んでしまうのですが、180°パルスをもちいると、この影響も補正することができます。
磁場の不均一は位相の変化を招くことです。
位相の変化は先ほど言ったように180°パルスでほぼ相殺できます。
というわけでSE法は磁場の不均一や磁化率の影響の少ない画像をつくることができます。
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